平成28年度の消費税改正のひとつに、
「高額特定資産を取得した場合の中小事業者に対する特例措置の適用関係の見直し」
があります。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/h28kaisei.pdf
今回の改正により、
消費税の課税事業者が高額特定資産(※1)の仕入れ等を行った場合には、
仕入れを行った課税期間の翌課税期間から、
仕入れを行った課税期間の初日以降3年を経過する日の属する課税期間まで、
免税事業者になれず簡易課税の適用もできなくなりました。
※1:一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)が1000万円以上の
棚卸資産、調整対象固定資産をいう
例えば個人の課税事業者が、
2016年4月に1000万円の固定資産を購入した場合、
2017年2018年は必ず課税事業者として申告し、簡易課税制度は利用できません。
これにより何が変わるか簡単に説明すると、
多額の固定資産や棚卸資産を購入した年だけ課税事業者になり消費税の還付を受け、
それを販売した時には免税事業者として消費税の納付をしないという一種の税金逃れが、
より難しくなったということです。
→固定資産については、販売をしなくても、課税売上割合が大きく変動すれば
消費税の納付が発生する制度があります。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6421.htm
従来も、消費税の還付を受けるために消費税の課税事業者選択届を提出して
課税事業者になり、その上で調整対象固定資産を購入した場合には一定期間内は
免税事業者になれないという縛りによって当該税金逃れを防いでいましたが、
今回の改正によってさらに厳しくなったということになります。
改正を踏まえた上で、課税事業者か免税事業者か適切に判断することが必要です。
○簡単な設例
①2014年は課税売上なし。
前年に課税事業者選択届を提出して課税事業者として申告。※消費税なし
②2015年も課税売上なし。引き続き課税事業者。
③2016年4月に1000万円の固定資産を購入。
課税事業者として消費税を申告。
売上は課税売上のみの100万円(課税売上割合は100%となる)
消費税=100万円×8%-1000万円×8%=△72万円 還付される
②2017年の申告→不動産賃貸開始
売上は不動産賃貸収入(非課税)1000万円のみ※課税売上割合0%
従来:
調整対象固定資産の購入が(2016年)、課税事業者選択届を提出した課税期間(2013年)の翌期間から2年以内ではないため、2017年以降は免税事業者になることができる
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6501.htm
→調整対象固定資産の適用なし。よって還付を受けるだけに成功
改正後:
2016年に高額特定資産を取得しているため、
2017年、2018年は免税事業者になることができない
→1000万円の固定資産は調整対象固定資産となる。
→課税売上割合は2016年の100%から2017年以降は0%となっているため
著しい減少に該当。
よって、2017年の申告は消費税が発生しないが、
2018年の申告は2016年に還付を受けた額80万円(固定資産価額1000万円×8%)を
納付しなければならないことになる。
非常にややこしいですが、覚えておくとよいでしょう