賃貸不動産を保有していた両親が亡くなって、自分が相続し、不動産収入を申告しなければならなくなった方は結構いるかと思います。
このような場合、相続してから12月末までの不動産収入について翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。
そこで今回は相続した不動産収入を申告する際に留意する点のうち、減価償却費の計算方法について説明します。
賃貸のために取得した不動産(土地を除く)については、その取得した時に支払った価額を一定期間にわたって経費とすることができ、これを減価償却といいます。
では、相続した場合の減価償却はどのように計算するかというと、
※あくまでも亡くなられた方が不動産を取得した時の価額と、減価償却した後の残存価額のことです。相続税を計算する際の評価額とは全く異なりますのでご留意ください
Aについては、読んでそのまま、Bがややこしくなります。
減価償却の償却方法については、過去に度々改正されてきているため、いつ取得したかによって異なるのです。
ここで留意すべきなのは、相続も取得と考えるので、相続した時点で採用できる償却方法でしか計算することができません。
例えば、
建物については、平成10年3月31日以前に取得したものは、定率法が採用できましたが、現在は定額法しか採用できません。
また、定額法についても平成19年3月31日以前に取得したものは旧定額法で、それ以降のものは新定額法で計算されます。
なお定率法は、平成19年4月1日~平成24年3月31日は250%定率法でしたが、平成24年4月1日以降に200%低率法となりました。
よって、亡くなられた方が計算していた方法をそのまま採用できるというわけではないということです。
以下例題で説明します。全て28年2月末に亡くなられたとして考えます。
※便宜上、耐用年数50年、定額法の償却率0.2として考えます。
亡くなられた方も、相続した方も新定額法しか採用できないため、計算方法は全く同じになります。
よって、亡くなられた方の申告における減価償却費は120万円×0.2×2か月/12か月=4万円。残った価額(残存簿価)は96万円
相続した方の減価償却費は、120万円×0.2×10か月/12か月=20万円です。
この場合は、普通に自分で取得した時の計算と変わらないので簡単ですね。
平成19年3月31日以前に取得した建物は旧定額法で計算します。
この時の計算方法は、取得価額×0.9×償却率です。
一方で、相続した方は上述のBに記載しているように、相続した時点で新たに取得したと考えるので、新定額法で計算しなければなりません。
よって計算方法は例題1.と同様に、取得価額×償却率です。
具体的には、
亡くなられた方の平成28年の減価償却費は120万円×0.9×0.2×2か月/12か月=3.6万円
相続した方の減価償却費は1.と同じ20万円です。
国税庁のHPに他の事例も載っていますので見てみてください。
減価償却の計算自体が、なかなか難しいのに、相続の場合はもっと複雑になります。よって分からなければ税務署か税理士に相談するのが良いでしょう。