個人から法人成りの税務(売買処理した時)

個人事業主から法人成りする時には、個人で使っていた事業用資産や棚卸資産をいかに移すかが問題となります。

方法は色々とありますが、今回は売買によって法人へ引き渡しをした場合の税務について説明します。

※法人へ賃貸する場合はこちらをご覧ください。

1.所得税(譲渡所得)

•固定資産の売却

固定資産については、法人への売却に伴い譲渡所得が発生します(事業用資産の売却であっても所得税法上は事業所得ではなく譲渡所得です)。ただし、通常は簿価での売却となると思いますので、個人で利益が発生しなければ譲渡所得の申告は必要ありません。もし仮に簿価よりも低い値段で売却した場合、所得税法59条1項2号のみなし譲渡の規定や、所得税法157条の規定により、思わぬ税金が発生してしまう場合がありますので留意が必要です。

•棚卸資産の売却

棚卸資産については、通常の取引と同様に、個人事業主として法人に売却したことになりますので、売上に計上することになります。ここで注意しなければならないのが、その売却価額です。

棚卸資産に関しては通常、売却価額があると思いますので、その売却価額の70%以上で売却する必要があります。

例えば仕入値50、販売価額100の商品であれば70以上で法人に引き渡す必要があります。

仮に固定資産と同じように簿価の50で引き渡しをしたならば、販売価額の70%である70との差額20が収入として加算されてしまうことになります(「低額譲渡」所得税法40.基本通達40-2)

なお、法人では以下の仕訳が切られますので、同様に損をすることになります。

棚卸資産70 / 現金50、受贈益20 ※この20に税金がかかります。

固定資産と違い、販売を目的に保有している棚卸資産は時価が明確に分かるため、低額譲渡の規定に留意が必要となります。

2.消費税

棚卸資産、固定資産の売却ともに法人へ売却した対価が課税売上となります。よって、法人成りした年度の消費税は、通常高くなることが予想されます。

※消費税の低額譲渡の規定は法人が役員に対して行うもののみのため、気にする必要はありません。

法人成りした場合には、上述のような低額譲渡に該当しないようにすれば、売買の方法が最も税務メリットが大きいといえます。他の方法については後日説明いたします。