現金主義から発生主義への変更(移行)について

個人事業主で、簡易な記帳方法として現金主義、つまり売上は入金した時、仕入経費は支出した時に計上する方法で経理している方がいます。

この現金主義という方法は青色申告で一定の条件(前々年の合計所得が300万以下で事前に届出をしていること)を満たさない限り本来は認められません。

正しくは、売上や仕入を実際に行った時、すなわち発生した時に計上する必要があるのです。

これを発生主義といいます。

例えば、12月売上で1月入金の場合、現金主義なら1月の売上ですが、実際にものを販売したり、サービスの提供をしたのは12月であるため、発生主義では12月の売上とすべきなのです。

このような現金主義による間違いは税務署の指摘事項となりうるので、出来るだけ早くに直す必要があります。

よって、今回は現金主義から発生主義への変更方法について説明します。

例えば27年は現金主義、28年から発生主義に変更する時、27年12月(28年入金)の売上をどのように処理するかが論点となります。

すなわち、28年入金だと現金主義で申告している27年の売上には計上されず、一方で売上自体は27年に行われているため28年の発生主義による申告にも計上されません(28年の申告は28年1月売上、2月入金から計上される)。その結果、27.28年どちらの申告にも計上されなくなってしまうのです。

このような漏れを解消するための方法としては、28年の申告に28年1月入金の売上を追加計上することとなります。

これは所得税法施行規則第40条に記載されている方法で、結果的に28年の売上は13ヶ月分となります。

なお、現金主義では、開業した年に1カ月少なく申告しているため、今までの申告額のトータルで見ると売上が多く計上されているわけではありません。

例:26年11月開業の場合、発生主義なら11月からの売上が計上されるため、26年の申告は2カ月分の売上であったはずが、現金主義でやっていると12月入金で1カ月分の売上しか計上出来ていません。よってこの年に一か月分得をしているのです。

このように、変更の年は13か月分計上されることになり、タイミングによっては税負担が重くなってしまうことに留意が必要です。

この負担がいやという人は、過去に遡って全て申告をやり直す方法もありますが、やり直した結果税金が減ったとしても、減らすことができるのは5年前までが限度です。やり直す手間等を考えると現実的ではないでしょう(本質的には現金主義は認められていない処理のため全てをやり直す方法が正解ではありますが)。

なお、発生主義にした時、毎月の経理も気にしないといけないかというと、そうではありません。月々の帳簿は現金主義で計上し、申告を作成する際に、その年の1月入金の売上を除いて、翌年の1月入金を加えるという決算処理をすればいいのです(仕入経費も同じです)。

発生主義による正しい計算をすることで、その年の利益をきちんと把握できることにもつながるので、ぜひ検討ください。