本日は配当金と確定申告の関係について説明したいと思います。
とても複雑ですが、かなりお得になることもあるので覚えておくといいと思います。
年末になり、3月末決算の会社の株式を保有している場合、中間配当の配当金計算書が届く時期かと思います。
配当金については、基本的に源泉徴収されている(受け取る時点で税金が差し引かれている)ため、確定申告については必要ありません。
一般的には非上場株式や保有比率が3%以上の人は稀ですので今回の説明では省かせていただきます。
ただし、以下の場合には確定申告をした方が得になります。
注意点:NISAの枠内で購入した株式から発生した配当金については税額が発生していませんので、以下に当てはまり申告したとしても、お金が返ってくることはありません。
1. 株式投資で損失が出ている。
株式投資で損失が出ている場合は、確定申告をすることで、株式の損失を配当金から差し引くことができます。つまり、10万円の配当があって源泉徴収されていたとしても、株式で損失があれば、配当金から源泉徴収されていた税金が一部もしくは全額返ってくることになります。
例:配当金10万円、株式損失5万円の時。
※配当金からは源泉徴収が20,000円されています。
所得金額の合計は10万円-5万円=5万円
これに税率20%をかけると、納めるべき税金は10,000円となります。
よって、申告することで源泉徴収20,000円-納めるべき税金10,000円=差額10,000円が返ってくることになります。
※同じ特定口座内での取引については、証券会社が上記と同じことを自動でしてくれているため、申告しなくても源泉徴収税額は自動的に10,000円になっています。詳しくは証券会社から届く特定口座取引報告書の記載をご覧ください。
2. 配当金の他に所得がない、もしくは他の所得が低い場合
配当金の他に所得がない、もしくはあったとしても低い場合、申告することで、各種所得控除を配当金にあてることができます。
例えば、
配当金が10万円で給与所得が28万円の時(給与収入は93万円)、二つ合わせた所得の合計額は38万円です。
所得控除は誰でも38万円の基礎控除がありますので、38万円-38万円で所得金額は0円。よって、自分で申告した場合、税金は発生しません。一方で、申告しないままだと、配当金は受取時点で20%の税金(20,000円)が差し引かれていますので、申告することで20,000円だけ返ってくることになります。
※なお、上記の事例で給与所得が30万円の場合はあったら、配当金と合わせた所得額は40万円となり、扶養控除の条件(所得が38万円以下)から外れてしまい、思わぬ負担になってしまうデメリットがあるので注意が必要です。
3. 配当金を含めた全ての所得(所得控除後)の金額が695万円以下の場合。
これについては、少しややこしくなりますが、配当所得について総合課税を選択した場合、配当控除というものを別に受けることが出来ます。
これは配当所得の10%を税金から差し引いてもらえるというものです。
全ての所得の合計が695万円以下(配当所得を含む)であれば、これを利用して申告した方が、源泉徴収されている金額よりも安い税金で済むことになります。
具体的には以下の計算です※復興所得税は考慮していません。
所得金額695万円で、そのうち配当所得は50万円の時。配当所得から源泉徴収されている額は100,000円です。
配当所得を申告することによって増える税金は50万円×税率(所得税20%+住民税10%)=15万円。
一方で配当控除は50万円×(所得税10%+住民税2.8%)=6万4000円
よって15万円ー6万4000円=86,000円となり、源泉徴収されている額より14,000円得になります。
一方で所得金額が750万円で配当所得が50万円の人は、
配当所得を申告することによって増える税金は50万円×税率(所得税23%+住民税10%)=16万5000円。
一方で配当控除は50万円×(所得税10%+住民税2.8%)=6万4000円
よって16万5000円ー6万4000円=101,000円となり、源泉徴収されている額より1,000円増えるため、申告すると損になります。
非常にややこしい話になりますので、とりあえず695万円を目途に申告するかしないか判断するのがいいかと思います。
→平成29年度税制改正によって上記の考え方は一部変更となっています。詳細はこちらの記事を参照ください。
以上、配当金については悩まれる方も多いと思いますが、上記の他に保育所のお金等、思わぬところに影響が出てくることもありますので、申告する際には留意が必要です。