脱退一時金の還付申告について(非居住者、退職所得の選択課税)

海外の人が日本で一定期間働き厚生年金に加入、その後帰国した場合、厚生年金の脱退一時金を請求することができます。

この時、当該一時金は非居住者に対する退職所得として、支給される際に20%の源泉所得税が引かれます(既に帰国済みのため非居住者として扱われます)※復興所得税を入れると0.42%です。

ただしこの源泉所得税については、税務署に還付申告をすることで返してもらうことができます。

これは、同じ退職金を受け取っているのに、居住者と比べて納税額の差が大きいということから定められている法律です(所得税法171条)。

居住者は退職金、つまり退職所得の計算は、収入から退職所得控除額を引いて、そこからさらに1/2して税金が計算されるため、税金がかなり少なくなるようになっています。詳細はこちら

ここで申告に際して留意点があります。

① 還付申告をして、還ってくる税金は国内の口座にしか振り込むことができません。

② 本人は非居住者として国内にいないため、代わりの人が申告することになります。

そこで納税管理人という制度を利用することになります。

この制度は、本人に代わって代理人が申告及び還付金の受け取りが行えるという制度です。
選任の方法は簡単で、出国前の住所地を管轄する税務署に「納税管理人の選任届出書」を提出するのみです。

ちなみに選任は出国前でも出国後でも可能です。※申告書の提出と同時でも可能

あとは、この納税管理人が本人に代わって申告をするわけですが、還付金はあくまでも納税管理人の口座に振り込まれるため、信頼できる人にする必要がありますね。

また、申告といっても通常の申告と異なるため、ある程度の知識を有している人を選ぶ必要があります。

以下申告の際の留意点を記載します(所得税法第173条)。

① 申告は支給金額が確定した日以降にすることができます

② 確定申告ではなく、「退職所得の選択課税申告書」として提出することになります。
ただし様式は通常の申告用紙を利用します(特別の様式はありません)。
つまり、申告用紙に記載されている文字を二重線で消して自分で記載することになります。

③ 各種の所得控除は受けることができません(基礎控除も不可)。また退職所得のみの申告となります。退職所得は通常の計算方法、つまり退職所得控除額を引いて1/2を乗じる方法となります。

④ 住所地及び氏名欄には申告する本人と納税管理人両方の記載が必要です

なかなか難しい制度ですが、多くの税金が還ってくる可能性が高いので、ぜひ利用することをお勧めします。